C11チューンアップ・レポート
それは、昨年、夏の大観望会のことでした。
I:「Kさん、こと座εって、これだよねぇ。なんか分離してないんだけど。」
K:「これで、いいはずだよぉ。でも、なんで分離してないの?変だようぉ。」
「隣の、18cmマクストフや10cmフローライトでは完璧に分離してるよ。」
私のC11は、光軸はズレてきているし、気温に鏡筒がなじむのに時間は掛かるし、どうもよく見えません。また、鏡筒が短く、周りが明るいため、フードを付けてもまだ視野が白っぽくなります。
そこで、以前からやろうと思っていたチューンアップをすることにしました。行ったチューンアップの内容は、以下の二点です。
1.
鏡筒内側に植毛紙を貼る(迷光を防止し、コントラストを向上させるため)。
2.
光軸調整をする。
では、これから、その手順をご説明いたします。
1.鏡筒内側に植毛紙を貼る
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植毛紙は、Tさんが科学館にあずけていたものをいただいて来ました。ただし、植毛紙は今では入手できないそうです。しかし、代わりに遮光シートというものが販売されていて天文雑誌の広告に載っています。
まず、補正板、補正板を押さえるリング、鏡筒トップリングにマジックで印しをしてから、六角ねじをはずして補正板を取り外します。(はずしてビックリ。補正板はまん丸ではありませんでした。いいかげんに縁が削ってあってガタガタ、トップリングの中での遊びが大きく、小さなコルク片が当ててありました。念のため、位置をマーキングしておきましたが、これで、中心は合っているのでしょうか?)
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鏡筒内側の寸法を測り、植毛紙を裁断します。(インチサイズのため、合う六角レンチが無く、主鏡セルとトップリングが外せませんでした。そのため、内側の六角ナットが邪魔なので、主鏡セルの六角ナットとトップリングの六角ナットの間に植毛紙を貼ることにしました。)
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植毛紙の裏紙にカッターナイフで1〜2cm幅に切れ目を入れます。(これは、裏紙を剥がしながら貼って行くとき、裏紙が剥がしやすく、そして、しわにならずに貼りやすくするためです。表の植毛紙まで切らないように注意します。)
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中央の裏紙を1〜2cm幅だけ剥がして、鏡筒の内側に張ります。(植毛紙を丸くして鏡筒に突っ込み、傾かないように注意しながら位置を決め、中央の裏紙を剥がした所を押さえて固定します。)
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裏紙を少しずつ左右に剥がしながら植毛紙を貼っていきます。(鏡筒が太くて短いため、結構簡単に貼れました。)
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副鏡バッフルの内側と外側にも植毛紙を貼ります。(副鏡バッフルは黒いエンボス地のプラスチック製で、迷光処理は不十分と思われます。また、副鏡セル?と思われる、副鏡のすぐ横はなぜかピカピカに反射していました。そこで、内側、外側全てに植毛紙を貼りました。しかし、曲線のため型紙を取ってやっても、ぴったり合わせるの至難の業です。結局、かなり妥協してしまいました。)
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接眼バッフルの外側にも植毛紙を貼ります。(当然、主鏡の摺動部分以外に貼りました。内側は、でこぼこの塗装が施してある上、細くて貼りにくそうだったので貼りませんでした。)
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主鏡や副鏡、補正板のホコリを払い、印しを合わせて組み立てます。(補正板を押さえるリングを六角ネジで止める力加減が今ひとつ良く分かりません。外したときの感触を思い出しながら締めましたが、緩すぎないか?あるいは、締めすぎて歪んでいないか?と少々不安が残ります。外す前にネジの頭にも印しをしておけば良かったと反省です。)
以上の作業を、約2時間で行いました。補正板側から主鏡を覗き込むと、作業前に比べ、明らかに鏡筒の中が暗くなり、以前の様に反射している部分はなくなりました。結果が期待できそうです。
次に、光軸の調整を夜に行いました。
2.光軸調整をする
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倍率は135倍、天頂プリズム使用で、木星を視野に入れます。
(もちろん、高倍率で作業するため、極軸を合わせた赤道儀に載せます。木星を選んだのは、最初の見え味を確かめたかったのと、明るいので初期調整にいいのではと考えたからです)
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木星のピントを少しずらして、ドーナツ状にします。
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副鏡のカゲがドーナツの中心に来るよう、副鏡の光軸調整ネジで調整します。
(私のC11は、ネジが右に回しきった状態でしたので、全体に少し左へ緩めてから調整しました。最初、回しすぎて木星が視野の外へ出てってしまいました、一度に回わすのは30°ぐらいが良さそうです。副鏡の光軸調整ネジを緩めて、光軸が大きくずれた時の木星は、ピントが甘く、コントラストも無く、模様がぼんやりとしか見えません。光軸でここまでひどくなるとは、ちょっと驚きました。)
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倍率は215倍、天頂プリズム使用でカペラを視野に入れます(最終調整は回折リングでするので、1等星を使います。また、シーイングが良く、鏡筒がよく気温になじんでいる必要があります。)
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ピントを少しずらしてドーナツ状にして、回折リングが見えるようにします。
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回折リングの中心に副鏡のカゲが来るように、副鏡の光軸を微調整します。(回折リングはきれいに見えていましたが、まん丸ではなく、少しいびつなような気がします。シーイングの影響?、光学系の不良?、なんか不安ですが、最も考えられるのは、鏡筒が気温に十分なじんでいないことの影響です。この調整は、やってみるとけっこう簡単で、ファインダーを合わせるようなものです。観測前に毎回やってもそれほど面倒ではなさそうでした。)
調整後、木星をもう一度、見てみると、調整前にはピントをずらすと木星が均一にボケるのではなく、偏ったボケ方をしていたのが、調整後にはキレイに全体が均一にボケるようになり、模様も以前より、はっきりとコントラストが高く、しかもカラフルに見えるようになりました。また、土星を見てみると、カッシニの隙間がくっきりと見え、B環が外から内側に向かってグラデーションのように暗くなって行く様子もはっきりと見えました。
それに、惑星周りの視野の白っぽさも目立たなくなり、リムがすっきりと見えるようになりました。なんだか、久しぶりにまともな惑星像を見た気がします。これで、とりあえず、目的は達成できたようです。あとは、こと座εにリベンジだ。
<改造前>
副鏡バッフルに反射が見られる。
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<改造後>
植毛紙を貼ることで、反射がなくなっている。
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<改造前>
鏡筒内側が明るく、接眼バッフル外側に
反射が見られる。
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<改造後>
鏡筒内側と接眼バッフル外側に植毛紙を貼ることで、鏡筒内がかなり暗くなり、接眼バッフル外側の反射もなくなっている。
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<光軸調整>
光軸調整は、副鏡の3本の光軸調整ネジで行います。
天頂プリズム使用時、(天頂プリズムは真上に向ける)恒星の回折像の中心が右下に見えたら、右下のネジを少し締めます(右に回す)。
回折像は、口径cmの10から15倍の倍率で、明るい星(できれば1等星)を、少しピントをずらすと見えます。ただ、シンチレーションが悪いと、はっきりとは見えません。
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